2013年5月4日土曜日

お金の流れを理解するためのキャリアプランニング


新卒でシューカツせずに就職して2年が経ち、ぼくは転職して現在2社目。
→就職したときの記事:個人ブログ開設しました。
→転職したときの記事:学生や新卒1,2年目の若者が就職・転職活動せずに仕事に就くのに大切なこと

今回の転職で扱う金額は数万から数百万になった。ぼくは何も変わっていない。ビジネスが変わったからだ。金額規模が大きくなるほど、仕事自体が面白くなる。だけどそこで間違えない方が良いのは、大きなお金を動かしていることと自分の実力は100%相関しているわけではないということ。自分が変わらなくても、環境が変わればそれでだけで変わってしまうものがある。ビジネス単価も給料も、環境が変われば変わってしまう。良くも悪くも。



ようやく、ぼくがフロントに立たせてもらうことになったお客さんがいる。そのお客さん向けに見積を作っていたときのこと。「○○の項目50万とかにしちゃうと、メガネくんが大変だと思うよ。純50万円分の○○をしなきゃいけないから。」と先輩たちに言われた。

ここで考えたことは3つ。1つは、お金はお金を動かすことで生まれている、ということ。1つは、今まで動かしてきたお金が自分の扱えるビジネス規模を決める、ということ。そして1つは、頭だけを使って生み出すアウトプットに対して価値ベースでの値付けができるようになりたい、ということ。

お金はお金を動かすことで生まれている
マーケティングリサーチ業界の案件売上単価は数百万円規模が平均だが、その半分以上が外注費ということがザラにある、非常に儲からない業界だ。外注費を差し引いた中から純粋に知識労働としてお金を積んでいる部分だけを取り出すと、本当に少額になる。

つまり、ぼくらは発注しただけ、お金を動かしただけでお金をもらっているということ。実際は発注作業などの一つ一つの項目に上澄みが乗り、全体に管理コストが掛けられるので、お金を動かしただけでお金を生み出しているわけだ。

銀行などの金融業のことを、お金を動かすだけでお金をもらっていて実体経済を良くしていない、とけなす意見を耳にすることがあるが、銀行だけでなく多くのB2B企業は同じようなことをして儲けているし、それが社会の仕組みなんだ、ということに気づいた。動かす金額が大きくなればなるほど、こういった仕組み的な気付きももっと得られるのではなかろうかと思っている。

今まで動かしてきたお金が自分の扱えるビジネス規模を決める
この業界では100万~1000万強の案件を扱うので、1000万までであれば、どれくらいの作業量でどのくらいのお金を動かす必要があるのかがわかる。

逆を言えば、1000万円以上のプロジェクトはぼくにとって未知の領域であって、部門の年商や会社の年商からイメージをできる範囲のことしかわからない。もし1億円の見積もりを作ることになったら、不安でちびってしまうかもしれない。

頭だけを使って生み出すアウトプットに対して価値ベースでの値付けができるようになりたい
上記の会話について少々乱暴に言ってしまえば、ぼくのチームは、純粋な価値として50万円をもらうだけの○○ができない、ということだ。

この金額感は会社固有であり、ビジネス固有であり、業界固有だが、少なくともマーケティングリサーチ業界、そして恐らくほとんどのベンダー企業は、工数見積りによって決められている。ぼくらは知識に対してお金をもらってるのではない。時間に対してお金をもらっている。なぜなら、一切お金を動かさない、頭だけを使って生み出す価値というのは、値付けが難しいから。コストゼロ、純粋に100万円、1000万円をもらうためにはどんなことをすれば良いのか、わからないし、クライアントを説得することも難しい。ブランドなのか、スピードなのか、品質なのか。品質とは何なのか。

ぼくはこの工数見積りをどうやったらやめられるのかを考えたい。アウトプットを生み出す時間に関係なく、その価値で請求できるようになりたい。労働縮約に見えるところでいえば、アートの世界、戦略コンサルティングの世界などは、きっとそうなんだと思うし、労働集約に限らなければ、たとえば広告なんかは価値ベースの値付けだろう。逆に成果をより厳しく求められるだろうが、その責任の大きさも含めて、価値に対して、知識に対してお金をもらいたい。ただ、これを考えるためには高いお金をもらっている業界で働かないと難しそうだ。


というわけで、扱う事業規模が大きいこと、純利益としてとっているお金が高いこと、の2つを意識したキャリアプランニングをしたい、というのが最近の結論。お金の流れを知るために、お金の流れているところに行くこと。そうでなければ、理解できる金額が小さくなって、働いた時間分しかお金をもらえない、それなりの仕事しかできない人になってしまうと思っている。



一方で、先日友人がこんなことを言っていた。

「前の会社でみんなで宝くじを買ったの。その時に6億円あたったらどうする?という話をみんなでしていて、みんな冴えない答えばかりになっていた中で、一人だけ『おれはこの会社を買う』と言った人がいたのね。その人、いまはその会社の社長なの。」

お金の価値は理解できなくとも、感覚的にお金に対する制限を取り払うことはできる、という例なのかもしれない。この思考の制限を取り払う、という文脈で言うと、少し前にこんな記事を書いた。
[TED] Break The Bias-枠外思考

物事を考えるときに、「今常識として考えられているルール=スコープからいかに抜けだして思考するか」というのが大事なのではないかと最近思っています。ぼくは「枠外思考」と呼んでいるのだけれど。

で、その枠はこのプレゼンでいうならバイアスとして最初与えられているもので、それをスコープをずらしたり、大きさを変えてみたり、そういう思考法をしていかないと新しい価値は生み出せないだろうなという感じです。

たとえば、「1トンの肉があったらどんな焼肉するか?」とか。このときに「焼肉」というと「食べる」ことをセットで想定してしまうけど、「食べない焼肉」だってあるかもしれないですよね。

「宝くじで1億円あたったらどうする?」という問があったとしたら、「使う」ことが前提にあるかもしれないけど、たとえば「返金する」とかもあるかもしれないです。

お金の流れを理解しつつ、お金に対する思考の制限を取り払う。頭の片隅に常に置いて日々精進し、進路を選択していきたい。

異なる立場の会社を数社渡り歩く必要性


ぼくはクライアントワークの真っ只中にいて、「第三者が所詮第三者であって、製品やサービスに最後まで関われないこと」に寂しさを感じ、同時に、「調査後の開発とマーケティングこそ重要」であってその経験を積む必要があると日々考えている。

一方でふと、メーカーのようなB2Cビジネスモデルだけで売り上げている企業"だけ"に属することも、王様感覚になって危ないのではないかと感じ始めた。

なぜなら、コンテンツ産業のほとんどでフリーミアムが基本になってしまっているように、「どこにお金を回してどこをキャッシュポイントにするのか」を考えることがビジネスにおいてすごく重要になってきているが、所謂B2C企業は自分が常に発注者の立場であって、自分たちのビジネスしか考えられないからだ。

製品やサービス単体では売れず、ハコ、コンテンツ、プラットホームが揃わないと普及しなかったり、サービス受給者と支払い者が異なったりということが、当たり前になっていて、こういう状況をクリアするのは一つの会社だけでは不可能だ。

それすなわち、「色々なステイクホルダーがいる中でお互いが得するようにビジネスモデルを作っていく」ということだが、情報の中だけでしか他社ビジネスを理解出来ていない王様企業では、それができない。

実際に他社ビジネスを巻き込む中での経験的理解や肌感覚と情報だけでの理解の間には大きな溝があることを、ぼくは日々の業務で感じている。

なので、"お金を稼ぐことを目的とした"これからの雇われキャリアを考えるなら、一つのビジネスエリアを中心に円形に数社渡り歩く、もしくは、一つのビジネスラインを下流から上流、果ては発注側まで移動していくことで、色々な立場のビジネスを理解するのが理想だと思う。