こういう風に無料にしてくれたわけだし、考えさせられるテーマだし、感想を公開しておこうと思います。著者の方への感謝の気持ちも込めて。
あらすじ
「ブラックジャックによろしく」という話(の13巻まで)は、「研修医になったばかりの斎藤がスーパーローテートで複数の科を回る中での葛藤と、そのひたむきさに指導医も多かれ少なかれ影響されて変わっていく」というストーリー(だと思っている)。
根強く残る医局制度、急患受入体制の実態、病院数の不足、未承認薬品、赤ちゃんの生存権、精神障害者・不妊に対する差別や偏見(一般人、メディアの報道)、などなど、多くの医療の問題を対面する中で、斎藤は「目の前の患者の命を救うのが医者だ」という信念を元にもがき続ける。
現状の問題と向き合うこと。みんな初めは考える、でも考えなくなる。
斎藤が回った科の一つに産婦人科があり、そこで不妊治療の末生まれた双子とその両親出会う。
未熟児で生まれた二人。新たな命に感動するのもつかの間、双子の一人が、ダウン症であり、かつ早急に手術が必要だとわかる。
そこで思わぬ展開になる。父親が断ったのだ、その赤ちゃんたちの親になることも、手術させることも。
斎藤は「なぜ何の罪もない赤ちゃんが死ななければいけないのか」と、なんとか赤ちゃんたちが生きられる方法を探す。指導医にも意見をぶつける。指導医は激怒した。
「自分だけが考えてると思うな!」
斎藤はひるまないんだけれど、ぼく個人にはすごく印象的な言葉だった。
みんな一人一人考えているんだということ。
自分の一生懸命が、時に人を傷つけることがあること。(自分の現状批判意見を主張することによって、その現状にいる当事者の人たちの努力を暴力的に無視している。)自分がちょっと考えたことなんて、経験者の人たちはみんな通った道なのだということ。そして大半の人たちは、そういう問題のある環境に慣れていくのだということ。慣れていかなければ潰れるのだということ。
逆に、小児科の指導医はこう斎藤にこう言った。
「医師には2段階あるようです。医師としての使命に燃え、理想を追う段階。そしてその次・・・全てをあきらめ、目前の患者だけを黙々と診療し続けていくという段階です。」
医療現場には、斉藤が見つけた問題以上にたくさんの問題が恐らくあって、経験者の人たちは変えなければいけないはずのそれらの問題を知っているはずだ。
けれど、より多くの人を助けるため、出来るだけ新たな問題が発生しないようにするため、何より医者が潰れずに治療を続けられるようにするため、全体最適を考えた結果、権力者が作った既存のルールに収まってることがよいと、結論づけられてきたんだと思う。
少しでも、何かを変えるためには
会社と同じだ。
だから本当に変えたいと思ってる医者はまずそのルールの中で上に登り詰めようとしてるんだ。
斎藤が一番始めに出会った指導医との会話でこんなものがあった。
「教授がうんこ食えって言ったら・・・」
「それくらいの覚悟だ!私は必ず将来この大学の教授になる。教授になってまずこの大学を変える・・・全国にある永大の関連病院を変える・・・そして日本の医療を変える!」
働き始めてつくづく思うのだけれど、何かを変えるには、その機会をまず得るところから始まる。何かをするスキルっていうのはもちろん大事なんだけれど、その前にその土俵に立つために必要なことが色々ある。モノ申すことのできるポジションにつく、自分の意見を聞いてもらうための信頼関係を作る・・・。
(B2Bに限った話かもしれないけれど)そのためには技術的なスキルよりも、「そもそも」の部分でほぼほぼ決まってしまったりする。
クライアントの抱えている課題をしっかりと把握できているか、プロジェクトの情報共有をクライアントのフロントに立つメンバー以外にちゃんと共有できているか、現場の課題をフロントが理解できているか、予算の関係でスペックダウンしたその仕様で本当にいいのか、納品レポートを最終的に誰が見るのか把握しているか・・・。
書いてみると簡単そうな1つ1つのことが、本当に難しい。スケジュールがキツキツだったら?クライアントが全然情報を出してくれなかったら?クライアント自身も問題の優先順位付けや構造化ができていなかったら?予算がないと言われたら?
万全の状態でなくても(むしろそれが普通)、相手や環境をダメ出しするのではなく、そういう小さなこと1つ1つに対して向きあっていかない限り、何かを変えることなんて絶対できない。その小さな1つ1つの積み重ねが、変えるべきなのに変えられない問題となって現れるのだから。
社会人1年目も、2年目も、仕事で学ぶことで一番大きいのは、こういった泥臭い部分ばかり。表象だけ見ていても根本的な課題には辿り着けないし、こんなもんでしょと小さな問題1つを放置していても何も変わらない。
胸を熱くする、日々の仕事に活かしていきたい学びでした。
0 件のコメント:
コメントを投稿